この曲ははるかなる故郷とはまったく違い、
非常に高度なサーミ語で書かれています。
文法的にも条件法などが出てきますし、使われている単語も、
半分くらいは語彙集にない単語です。
そのため2週間程度でやっつけた付け焼刃のサーミ語では
太刀打ちできない部分が多くあり、 皆さんの期待する水準に達しているとは
言い難い解説になってしまいました。
しかしながら、ノルウェイ語の勉強からはじめて
本場の教科書と辞書を使ってサーミ語を極めるのは
私には無理ですので、悪しからず御了承下さい。
では一応解説です。
*第1連*
(本文) |
Gii boadasii ja vuolgasii |
(読み方) |
キィ ボアダシィ ヤー ヴオルガシィ |
(単語) |
gii |
疑問詞『誰』 |
boadasii |
動詞boadasn 『来る』 条件法3人称単数 |
ja |
接続詞『そして』『と』 |
vuolgasii |
動詞vuolgit 『去る』 条件法3人称単数 |
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(直訳) |
『誰が来て、去るのだろう(注1)』 |
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(本文) |
Loktesii dan dovddu |
(読み方) |
ロクテシィ タン トッヴトゥー |
(単語) |
loktesii |
動詞loktet 『上げる』条件法3人称単数 |
dan |
代名詞dat 『これ』単数対格 |
dovddu |
名詞『感情』 dovdu 単数対格 |
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(直訳) |
『この感情がこみ上げてくる。』 |
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(本文) |
Deavdasii dan unna doaivvu |
(読み方) |
テアヴタシィ タン ウンナ トアイッヴー |
(単語) |
deavdasii |
動詞『満たす』 deavdit 条件法3人称単数 |
unna |
形容詞『小さい』 unnni 修飾形 |
doaivvu |
動詞『思う』doaivvut 語幹+名詞化接尾辞-u 『思うこと、思い』 |
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(直訳) |
『この小さな思いを満たして欲しい』 |
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(本文) |
Eana mojoda |
(読み方) |
エアナ モヨタ |
(単語) |
eana |
名詞『大地』 |
mojota |
語彙集にない単語。文法的には動詞の3人称単数現在。
『笑う』と推測される。 |
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(直訳) |
『大地は微笑む』 |
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(本文) |
Nu jaskadit, nu leggadit |
(読み方) |
ヌー ヤスカディト ヌー レッカディト |
(単語) |
nu |
副詞『こんなにも』『それほど』 |
jaskadit |
副詞『静かに』 |
leggadit |
副詞『暖かく』 |
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(直訳) |
『こんなにも静かに、こんなにも暖かく』 |
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(注1) |
CDの訳とはかなり異なりますが直訳ではこうとしか解釈できません。 あるいは何かの慣用表現で特別な意味があるのかもしれません。 辞書さえあれば調べたいところですが現在手に入る日本語の文献では残念ながら限界です。 |
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△TOP△ |
*第2連*
(本文) |
Leago dat roahkatvuohta |
(読み方) |
レアコ タト ロアハカトヴォホタ |
(単語) |
leago |
動詞lea (be動詞) + 疑問文を作る接尾辞 ?go 『〜か?』 |
roahkatvuohta |
語彙集にない単語。おそらく『勇気』 |
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(直訳) |
『勇気って何?』 |
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(本文) |
Jos bargan dan |
(読み方) |
ヨス パルカン タン |
(単語) |
jos |
副詞『もし』(注1) |
bargan |
動詞bargat 『〜する』 一人称現在 |
dan |
指示代名詞対格 「これを」 |
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(直訳) |
『何かをすること?』 |
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(本文) |
Dahje jos in barga maidige |
(読み方) |
ダハイェ ヨス イン パルカ マイティケ |
(単語) |
dahje |
接続詞『それとも』 |
in barga |
否定動詞一人称単数 in + baragat 語幹 『〜しない』 |
maidige |
不明。Maidege 『何もないもの(英語のnothing)』か? |
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(直訳) |
『それとも何もしないこと?』 |
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(本文) |
Dolla buoldasa mu muoduit Almmi ivdne ruoksadin |
(読み方) |
トッラ プオルタシャ ム ムォデュイト アルッミ イヴトゥネ ルオクサディン |
(単語) |
dolla |
語彙集にない単語。名詞『炎』と推測される。(注2) |
Buoldasa |
同上。動詞『染める』三人称単数現在か?(注2) |
Mu |
代名詞mun 属格『私の』 |
Muoduit |
不明。名詞muohtu 単数対格muoduid 『頬を』か? |
Almmi |
名詞albmi 単数属格『空の』 |
Ivdne |
不明。名詞ivdni 単数対格『色を』か? |
Ruoksadin |
形容詞ruoksat 叙述形様格 『赤い状態に』 |
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(直訳) |
『炎は私の頬を、空の色を、赤く染める』 |
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(注2) |
この二つの単語は、語尾の形から文法的に動詞の三人称単数とも、
名詞の単数主格とも考えられます。
したがって、どちらが炎でどちらが染めるなのかは文法的には推定できません。
しかし、語彙集にduoldat (トゥオルタト)というdollaに近い発音の単語で、
『(湯を)沸かす』という動詞が発見され、意味的にも音的にも近いことから
これが『炎』である可能性が高いと考えられます。 |
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△TOP△ |
*第3連*
(本文) |
Mun muitan savgaldusait |
(読み方) |
ムン ムイターン サヴカルトゥサイト |
(単語) |
muitan |
不明。動詞muitit 一人称単数 muittan『覚えている』か? |
Savgaldusait |
語彙集にない単語。名詞『ささやき』複数対格か? |
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(直訳) |
『私はささやきを覚えている。』 |
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(本文) |
ivnnit leat mu mielas |
(読み方) |
イヴンニト レアト ムー ミエラス |
(単語) |
ivnnit |
名詞ivdni 複数主格『色』 |
leat |
be動詞 leat 三人称複数 |
mu |
属格『私の』 |
mielas |
名詞miella 『心』単数位格 「心に」 |
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(直訳) |
『色は私の心にある』 |
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(本文) |
Dovdduit maid dovddan |
(読み方) |
トヴットゥイト マイト トヴッタン |
(単語) |
dovdduit |
名詞dovdu 複数対格『感情を』 |
maid |
副詞『〜もまた』 |
dovddan |
動詞 dovdat 『感じる』 一人称単数 |
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(直訳) |
『感情をもまた私は感じる』 |
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(本文) |
dat leatgo cahci |
(読み方) |
タート レアトコ チャーハツィ |
(単語) |
- |
(直訳) |
『水って何?』 |
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(本文) |
gos dat bohte? |
(読み方) |
コス タート ポホテ |
(単語) |
gos |
疑問詞『どこから』 |
bohte |
動詞boahtit 『来る』 三人称複数過去 |
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(直訳) |
『どこからそれは来たの?』 |
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(本文) |
gosa bahtaredje? |
(読み方) |
コサ パハタレジェ? |
(単語) |
gosa |
疑問詞『どこへ』 |
bahtaredje |
語彙集にない単語。動詞『行く』か? |
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(直訳) |
『どこへ行くの?』 |
△TOP△ |
*第4連*
(本文) |
Mii lea duoddariigguin |
(読み方) |
ミィ レア トゥォッタリィックイン |
(単語) |
mii |
疑問詞『何』 |
duoddariigguin |
名詞duottar 複数共格『山々と友に』 |
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(直訳) |
『山々と一緒にあるものは何?』 |
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(本文) |
Mii lea mieras? |
(読み方) |
ミィ レア ミエラス |
(単語) |
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(直訳) |
『海には何があるの?』 |
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(本文) |
Dan halivccen diehtit |
(読み方) |
タン ハリヴッッチェン ティエヘティット |
(単語) |
dan |
対格 『それを』 |
halivccen |
動詞halidit 『〜したい』条件法一人称単数 |
diehtit |
動詞 diehtit 不定詞 『知ること』 |
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(直訳) |
『それを私は知りたい』 |
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(本文) |
muitasan bissanan jurdagiidda |
(読み方) |
ムイタシャン ピッサーナン ユルタキィッタ |
(単語) |
muitasan |
不明。動詞muittan条件法一人称単数『覚えている』か? |
bissanan |
語彙集にない単語。動詞『飛ばす』か?(注1) |
jurdagiidda |
同上。『意識を』か?(注1) |
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(直訳) |
『思い出し、意識を飛ばす』 |
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(本文) |
Divdan biegga muitalit |
(読み方) |
ティヴタン ピエッカ ムイタリト |
(単語) |
Divdan |
語彙集にない単語。『〜してくれる』というような動詞か? |
biegga |
名詞biegga 単数主格『風』 |
muitalit |
動詞muitalit 『話す』不定詞 |
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(直訳) |
『風は教えてくれる』 |
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(本文) |
Muitalit earalagan mailbmis |
(読み方) |
ムイタリト エアララカン マイルプミス |
(単語) |
earalagan |
形容詞『他の』修飾形 |
mailbmis |
語彙集にない単語。意味の推測困難。(注2) |
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(直訳) |
直訳について推定困難。日本語詞『海を渡り、山を尾超えて、そして』に対応か?(注2) |
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(注1) |
前者は語尾から動詞の一人称単数と分り、後者は名詞の単数属格・対格と分るため、そのように推測されます。 |
(注2) |
CDの日本語詞に比べて前2語の意味の乖離(かいり)が激しく、かなりの意訳と思われる。したがって文脈・文法からの推測も困難です。 |
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△TOP△ |
*第5連*
(本文) |
Gidde mu calbmii, lihka oidno cuovgga |
(読み方) |
キッテ ムー チャルプミ リヒカー オイトノ チュオヴッカ |
(単語) |
Gidde |
語彙集にない単語。『〜を閉じて』の意か? |
mu |
属格 |
calbmii |
名詞calbmi 単数入格? |
lihka |
動詞lihkkat 『動く、起きる』 三人称単数 |
oidno |
動詞oaidnot 『見える』 三人称単数 |
cuovgga |
名詞『輝き』 単数主格 |
|
(直訳) |
『私の目を閉じると、輝きが動き、見える』 |
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(本文) |
Govca mu bejiit lihka gulon saniit |
(読み方) |
コヴチャ ムー ペイィト リヒカー クロン サーニィト |
(単語) |
Govca |
語彙集にない語。『〜を塞いで』の意か? |
Bejiit |
同上。『耳』か? |
Gulon |
動詞 gullot 『聞こえる』一人称単数 |
Saniit |
名詞satni 『言葉』複数主格 |
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(直訳) |
『私の耳を閉じると、言葉が動き、聞こえる』 |
△TOP△ |
*第6連*
(本文) |
Duoivvu guoikanasat ravket eatnama |
(読み方) |
トゥオイッヴ クォイカ−ナサト ラーヴケト エアトナマ |
(単語) |
Duoivvu |
語彙集にない単語。『希望』か?(注1) |
Guoikanasat |
同上。『与える』または『恵み』か?(注2) |
Ravket |
同上(注2) |
Eatnama |
名詞eana 単数対格 『大地に』 |
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(直訳) |
『希望は大地に恵みを与え』 |
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(本文) |
Roahkatvuodas dola cuovga |
(読み方) |
ロァハカトヴォタス トラ チュォヴカ |
(単語) |
Roahkatvuodas |
語彙集にない単語。文法的には名詞の単数位格。『勇気において』か? |
Dola |
同上。『炎』か? |
Cuovga |
不明。動詞『輝く』三人称単数か? |
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(直訳) |
『勇気において炎は輝く』 |
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(本文) |
Ustitvuohta, ohcca eallima caci |
(読み方) |
ウスティトヴォホタ オホッツァー エアッリマ チャーチ |
(単語) |
Ustitvuohta |
語彙集にない単語。『いたわり』か?(注3) |
ohcca |
同上。動詞『〜を〜の源とする』か?(注3) |
eallima |
名詞eallin『命』単数対格 |
caci |
名詞cahci 『水』単数対格 |
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(直訳) |
『いたわりは水を命の源とする』 |
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(本文) |
Olbmo vissadus nu allin gos biegga |
(読み方) |
オルプモ ヴィッサートゥス ヌー アッリン コス ピエッカ |
(単語) |
Olbmo |
語彙集にない単語。『乗せる』か?(注4) |
vissadus |
形容詞 vissis 修飾形最上級『もっとも賢い』 |
allin |
語彙集にない単語。『探求』か?(注4) |
gos |
関係副詞『〜に』 |
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(直訳) |
『探求は風にもっとも賢いものを乗せる』 |
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(注1) |
語尾から名詞と推測されます。 |
(注2) |
両方とも文法的に動詞の三人称複数と名詞の単数対格の可能性があり、文法的にどちらがどちらであるかを推測できません。 |
(注3) |
文法的には両者とも動詞の三人称単数と名詞の単数主格の可能性があり、文法的な観点のみではそぞれがどちらの意味かを推測することは困難ですが、ustitvuohtaはustit(友人)と関連すると考えられ、『いたわり』に近い意味を推測できます。その結果後者は消去法で動詞と考えられます。 |
(注4) |
前者は語尾から動詞の三人称単数と考えられ、後者は消去法で名詞と考えられます。 |
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△TOP△ |
以上でこの詞の解説は終わりです。
ご覧の様に、私の力が及ばず、決して質の高い解説とは言い難いものになってしまいました。
この詞がいかに難しいサーミ語で書かれているか御理解頂けたかと思います。
私のわずかな力ではこれが限界です。
もしこれをご覧になった方のうち、サーミ語を専門的に勉強された方がいらっしゃったら、
是非より良い解説をお願いします!!